身近なウイルス量を減らして、3密環境であっても、感染リスクと重症化リスクを減らし、医療崩壊を防ぎたい――そういう思いをMISTECTに込めました。しかし、結局のところ、ひとりひとりが注意をしなければ、なにをやっても無意味です。理解を深めるために、NG行動(やってはいけないこと)をリストしてみます。

日常生活のNGリスト

いきなりサンドイッチ、いきなりスナック菓子

その手は本当にきれいですか? ということです。自動券売機で新幹線のチケットを購入して乗ったのであれば、そこで手指にウイルスがついた可能性があります。コンビニの店頭で感染者が飛沫を飛ばしていたら、それがスナック菓子の袋についているかもしれません。プラスチックや金属などの表面では、新型コロナウイルスは長く感染力を保ちます。食べる前に、手を洗いましょう。

電車を降りてすぐに喫煙コーナー

喫煙者の気持ちはわかります。やっと駅について、降りたところに喫煙コーナーがあると、吸いたくもなるでしょう。でも、ウイルスのついた指でフィルターをつかみ、口にもっていくのです。やめたほうがいいでしょう。手を洗ってからです。

手洗いせずに缶コーヒー

まったく同じように、外で缶コーヒーや缶ジュースを飲むのも要注意。プルトップをウイルスつきの手でオープンすることになるからです。ペットボトルのほうが、口をつけるところにウイルスを付着させるリスクが低いので、まだ安全。

無意識に髪の毛をさわる

もともと髪の毛は、いろんな雑菌をキャッチしてしまうものです。おでこのニキビに悩む若者が、前髪を切ったら治った、なんていう例も多数。そして新型コロナウイルスも、髪の毛に多数ついている可能性があります。無意識のうちに髪を触る癖がついていると、いつも手指にウイルスを転写することになる。意識しているなら、「あ、いまウイルスをつけちゃったかも」と自覚できるからいいのですが、無意識は困ります。そのままの手で、手づかみで何かを食べたりしてしまいやすい。

指をなめる

無意識といえば、紙をめくるたびに、指をなめる癖をもっているなら、即刻、矯正です。癖になっていると、ウイルスのついた手指でも、ついやってしまうもの。スーパーのレジ袋がなかなか開けなくても、指をなめるのだけは避けましょう。ひっぱれば、カンタンに開きますから。

お札を指をなめて数える癖も、即刻やめるべきです。お札にウイルスがついていると感染しますから、レジの店員は「ぞわっ」としています。

蓋をせずに流す

トイレの話題のついでに書いておきます。新型コロナウイルスは糞口感染が疑われており、大を流すときは「蓋を閉めてから流せ」と専門家は主張するようになりました。蓋をあけたままだと、トイレ中にウイルスがばらまかれる結果となるからです。

マスクの位置ずらし

マスクをアゴの下にずらしたり、位置を修正したりする人をみていると、たいてい、マスクの外側を指でつかんでいます。そこ、ウイルスの集まっているところですから! 外側には絶対に触らないことです。たとえば、マスクを外して何かを飲むのであれば、片方の耳をはずしてください。

飲食店などでのNGリスト

入店直後の消毒・手洗い

お店に対する礼儀として、入店直後に消毒をするのはいいのですが、とくにファミレスのような業態では、そのあと、メニューを見て、呼出ボタンを押しますよね。この段階で、新型コロナウイルスを手指につけている可能性があります。「ウイルスはツルツルな表面では長生きする」と覚えてください。メニューも呼出ボタンも、ツルツルです。もういちど、食べ始める前に手指を消毒(手洗い含む)しましょう。

タッチパネルで注文する場合も同様。病院ではタブレットでクラスターが発生しているくらいで、誰もが触る注文のタッチパネルは汚染されていることを前提に扱いましょう。きちんと対応できているお店では、画面を消毒できるような配慮がされているはずですが、TouchWandのような静電容量式のタッチペンを持ち歩くのもいい方法です。

「タッチパネルから注文した寿司を手で食べる」のではなく、箸で食べるだけでリスクは劇的にさがるわけです。タッチペンと箸のふたつでリスクはさらに下がります。

まわし飲み・取り箸の共用

新型コロナウイルスは唾液に多数いることがわかってきています(だから、唾液を使った検査も登場しているのです)。最近のクラスターでは、お酒のまわし飲みが原因と思われる事例も出てきました。コップの共用、取り箸の共用などは、避けるべきです。

大皿からとりわけるなら、最初にやってしまいましょう。テーブルの上に長くあると、飛沫は飛ぶし、直箸の人も出てきます。トングや取り箸の共用が、どれほど接触感染リスクの可能性があるかは、NHKのこの記事でよく分かるはずです。

クルーズ船の接触感染 実験で検証 新型コロナウイルス(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200508/k10012422171000.html

カラオケマイク・カラオケマシンの操作後の飲食

カラオケマイクやカラオケを操作するタッチパネルは、新型コロナウイルスが付着しているという想定で扱うべきもののひとつです。いまや、そういうもの多数ある。銀行ATMの操作パネルなどもそう。

問題は、次のアクションです。銀行ATMの操作直後にポテトチップスを食べる人は滅多にいませんが、カラオケは違う。歌いながらおつまみを手づかみで食べ、コップを共用したりしていると、感染してしまいやすい。歌う部屋と、食べる部屋を別にするとか、歌い終わったら手洗いをするなどの対策が必要でしょう。マイマイクの持ち込みも、いい方法だと思います。

ノーマスクで談笑しながらのピックアップ

友人といると、つい談笑しながらの商品ピックアップになってしまいますが、いまやマスクもせずに声を出すと、白い目で見られる状況。商品に飛沫が飛ぶからです。まして、スーパーマーケットやパン屋の店頭でそれをやると、顰蹙ものです。マスクをしましょう。あるいは黙ってお買い物。

不適切な使い方

マスクの外側を外にして折る

マスクを完全に外す必要があるときは、外側が内側になるように二つ折りにします。つい、口のついたほうを内側にしたくなるものですが、ウイルスは外側についているので、こちらを内側にするのが正当。そしてその場で捨てるのがもっと正当ですが、なかなかそうもいかない。まして手作りの布マスクなどでは、繰り返し利用が当然。「外が内」と覚えてください。

マスクをしての運動

厚生労働省も警告をだしはじめました。マスクをするだけで身体に負担がかかり、生命の危険があります。熱中症になりやすくもなります。「運動選手はマスクをして高負荷トレーニングをしているのだから、マスクをして運動するのは、むしろいいことのはずだ」という意見もありますが、オリンピック代表になるような運動選手たちには、バイタルデータを測定しながら負荷設計をする医師やトレーナーがついており、適切な負荷でやっています。それもなく、いきなりマスクして運動するのは避けるべきです。

ちょこんと押してのアルコール消毒

アルコールポトルのトップが汚染されているに違いない、という感覚的なものでしょうが、ちょこんと押して、少量のアルコールで消毒している人を見かけます。あのポンプは、最後まで押し切ることで、必要量が出るようになっているのです。たっぷり出して、両手でもみこむようにあらゆる表面にすりこむように乾燥させてこそ、手の消毒。ちょこんと押して、ささっとやるのでは、ほとんど意味がありません。

濡れた手へのアルコール

トイレにアルコール消毒液がある場合、濡れたままの手にアルコールをしている人を見かけます。これでは威力はたぶん半分以下。アルコールはウイルスのエンベロープを壊しながら、蒸発するときにイッキに不活化するのです。「乾いた手にアルコール」が常識です。

加湿器に次亜塩素酸ナトリウム

室内のウイルスをやっつけようと、次亜塩素酸ナトリウム溶液を加湿器にいれる例が増えているようです。なぜそれがわかるかというと、そのせいで肺に炎症(つまり肺炎)を起こし、病院にかけこむ例が増えているからです。

肺炎ですめば、まだいいかもしれません。次亜塩素酸ナトリウム水を噴霧した場合は、失明するおそれもあります。次亜塩素酸ナトリウム(ハイターなど漂白剤に使われているもの)はウイルスを不活化できるけれども、危険な物質でもあると覚えておきましょう。

なお、話題になっている「次亜塩素酸水」は、「次亜塩素酸ナトリウム水」とは違うもので、適切な使い方をするとはるかに安全に、そして効果的に使えるものです。病院などでは床の清掃や無人の部屋への噴霧などに用いられている例があります。

ただし、現時点で「人のいる空間」への噴霧の効果と、その安全性を認められているものはありません。独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の情報を随時確認してください。経済産業省のウェブサイトでも確認できます。

マスクをせずに清掃・消毒作業

次亜塩素酸ナトリウム水で車内の消毒作業などをしている方は、必ずマスクをしてください。やはり吸い込んでの肺炎の事例が出ています。

いや、これにかぎらず、清掃作業・消毒作業はマスクと手袋が必須です。いまや掃除はリスク。ウイルスをかき出して、空間に舞いあげている例も多くあります。清掃・消毒作業で着用したマスクは、基本、使い捨てにしましょう。

オゾンガス消毒器の導入

朝日新聞が報道したことから(2020年6月5日付記事「町工場のオゾンガス消毒器に注文殺到 コロナにも効果か」)、オゾンガスでウイルスを消毒する装置に注目が集まっています。

たしかに効果のある消毒方法ですが、新型コロナウイルスを全滅できるほどの濃度でオゾンを部屋に満たすと、そこにいる人間も命を落とすか、肺気腫で回復不能なダメージを肺に負ったりします。これは、無人の病室で、専門家の管理のもとに使用する前提の機械です。ゆめゆめ、オフィスや家庭に導入することは考えないでください。