「新型コロナウイルスに効果があるというエビデンス(科学的な証拠)」を求められるのは、当然のことだと思います。しかし、正直なところ、これがなかなか難しいのです。MISTECTには二次感染を防いだ実績がある。MISTECTが使用するGSEについては、菌・カビ・ウイルスを抑制したエビデンスもある。でも、「MISTECTというシステムが室内で効果をあげているエビデンスはとれない」というのが本当のところです。

しかし、これはMISTECTだけではありません。かなり大胆な発言になりますが、世の中に室内での効果について、確たるエビデンスをもつ除菌システムは存在しないと思われます。これは、ウイルスという極めて小さく、単独では増殖できない無生物が相手だからです。

部屋の中での経過観察ができない

ウイルスは極めて小さい存在で、目に見えません。光学顕微鏡でも見えません。そして、単独では増殖しません(宿主にとりつかないと増殖できない)。たとえばいま、「室内のコロナウイルスを一網打尽にします」というシステムがあったとします。「一網打尽にした」という証拠をとる科学的な方法が、じつはないのです。

室内にウイルスがいたことを確認するには、PCR検査を利用します。感染者を確認するアレです。ヒトが相手の場合は、ウイルスが多数いる鼻腔から検体をとって確認するのですが、この検査でわかるのは、「ウイルスがそこにいた痕跡」でしかありません。いたか、いなかったかはわかる。でもそれだけです。

残念なことに、PCR検査では、そのシステムがウイルスに打撃を与えたかどうかを確認することができません。つくづく、「菌はラクだった」と思います。菌は栄養があれば増殖しますので、「処理前」と「処理後」に検体をとって、培養してやると打撃の有無がわかる。処理前の検体はわっと増殖し、処理後のそれが増殖しなければ、そのシステムは有効だ、ということがわかるわけです。

ところがウイルスは、宿主にとりつかないと増えない。不活化したら(感染力がなくなったら)色が変わるとか、そういう観察者に都合のいい手がかりもない。Vero細胞という、新型コロナウイルスがとりつくと変形する細胞を使い、実際に感染させて観察するというのが、不活化を確認する方法なのですが、「処理後の室内からウイルスをとってきて、Vero細胞に感染させる」ということがそもそも難しい上に、たとえ不活化を確認したとしても、そのシステムの打撃によって不活化したのか、自然と不活化したのかが判別できません。

「たまたますでに(別の理由で)不活化していたウイルスをとってしまったんじゃないの?」「たまたまウイルスのいないところから検体をとってしまったんじゃないの?」と突っ込まれると、何も反論できないわけです。「ウイルスをぬぐった」こともわからない上に、ウイルスの不活化にいたる経過を観察することもできないためです。

小箱の中(in vitro)で、特定の条件で確認しているのみ

そのわりには、「xx大学で効果を実証」といったうたい文句が並んでいます。不思議ですが、その「エビデンス」を念入りに確認してみてください。いずれも小さな箱の中で、特定の条件下で実験しているのみです。私は「ボール球に手を出す四番打者」という表現をよく使うのですが、いわばトスバッティングを確認しているのみ。実戦になると、広さも段違いだし、ボール球(有機物の汚れやホコリ等)も飛んでくる。この悪条件で実証した例は、これまで見たことがありません。

小さな箱の中でなら、新型コロナウイルスを大量に箱の中にいれるなどして、なんとか実証できるでしょう。でもそれが、オフィスなどの大きな空間にそのまま通用するはずもないのです。そもそも、オフィスに生きのいい新型コロナウイルスをばらまくことさえできません。ヒトに感染させて確認することもできない(そんな実験、誰も許さないでしょう)。MISTECTも同様です。「MISTECTを部屋で実施したら、露出表面のウイルスが不活化した」というエビデンスはとれない。

しかしMISTECTには実績があります。山野楽器さんの全国462のレッスンルームで、クラスターを防いでいます。陽性者がいたクリニック、保育園、社員寮で「二人目」の感染者が出ることを防ぎました。いずれもいまのところは状況証拠に過ぎませんが、トスバッティングではなく、本番で結果を出しているという事実の積み重ねはあります。

「濃度のマジック」にも要注意

in vitroの結果が、広いオフィスでの成果を約束するものではない、という話ですが、濃度のマジックを感じる例もあります。たしかに小箱でウイルス不活化を確認しているかもしれないが、その薬剤を、小箱の中の濃度と同じ濃度でオフィスに使うと、その場にいる全員が死亡するに違いない、という例です。

逆にいえば、オフィスで、その場にいるヒトに影響のない濃度でその薬剤を使うと、ウイルスを秒単位で不活化するのは無理、という話。すべての化学物質は濃度がとても重要です。「エビデンス」をみるときは、この点にも注意をする必要があります(そしてGSEは酸化物質ではなく抗酸化物質で、ウイルスに効果のある濃度でも、ヒトに健康被害を出すことがない、稀有な薬剤です。手肌も荒れませんし、肺炎をおこしたりしません。むしろGSEには抗炎症作用があります)。

GSEが新型コロナウイルスを不活化している様子

電子顕微鏡で、アメリカの点鼻薬・Xlearに含まれるGSEが新型コロナウイルスを不活化している様子が撮影されています(ソース記事)。でもこれも、in vitroです。